解説
赤血球沈降速度(ESR)とは?
赤血球沈降速度(ESR)とは、採血した血液を抗凝固処理して静置した際、一定時間内に赤血球が沈降する速度を測定する検査です。
主に体内の炎症や血漿タンパク質の変化を反映する指標として用いられます。
赤血球沈降の原理
赤血球は表面が負に帯電しているため、通常は互いに反発し合っています。
互いに反発するから、血液中で赤血球がバラバラに分散して流れることができるんだね!
一方で、血漿中に含まれるフィブリノーゲンや免疫グロブリンは正に帯電しており、これらのタンパク質が増加すると、赤血球と結びつきやすくなります。その結果、赤血球同士が凝集し、塊となることで沈降速度が速くなります。


貧血時の赤血球沈降速度(ESR)の亢進の理由
貧血時に赤血球沈降速度(ESR)は主に以下の2点の理由により亢進すると考えられます。
- 貧血(特に炎症や慢性疾患に伴う貧血)では、血漿中のフィブリノーゲンや免疫グロブリンなどの急性期タンパク質が増加していることが多く見られます。これらのタンパク質は正に帯電しており、負に帯電した赤血球表面との電気的な中和作用により、赤血球同士が凝集しやすくなり、結果としてESR(赤血球沈降速度)が亢進します。
- 貧血時は赤血球数が減少するため、血液の粘稠度が低下し、赤血球が物理的に沈降しやすくなります。
注意点として、貧血時に必ずしも急性期タンパクの増加を伴うわけではありません。例えば鉄欠乏性貧血は一般的に急性期タンパクの増加を認めません。ただしその場合であっても、2の「赤血球数の減少による血液の粘稠度低下」という要因が残るため、急性期タンパクの増加を伴わない貧血であっても、ESRは亢進傾向を示すと考えられます。
赤血球沈降速度(ESR)は非特異的な炎症マーカー
赤血球沈降速度(ESR)は、さまざまな要因の影響を受ける指標です。そのため、「赤沈の亢進=貧血」と単純に判断するのではなく、ヘモグロビン値など他の検査結果とあわせて総合的に評価する必要があります。
医療現場では補助的な指標として扱われることが多いよ。
どんな疾患で亢進または遅延する?
赤血球沈降速度(ESR)は、さまざまな疾患によって亢進または遅延します。以下に、疾患別のESRの傾向を整理しました。
亢進(一般的に15mm/hr 以上)
- 正に帯するフィブリノーゲンや免疫グロブリン(抗体)の増加
- 炎症性疾患(感染症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、悪性リンパ腫など)
- 負に帯する赤血球やアルブミンの減少
- 赤血球減少:貧血、妊娠※
※妊娠中に赤血球自体が減少するわけではなく、血漿量の増加に伴い、赤血球濃度が低下します(希釈性貧血)。 - アルブミン減少:肝硬変、ネフローゼ
- 赤血球減少:貧血、妊娠※
遅延(一般的に1~2mm/hr)
- 正に帯するフィブリノーゲンや免疫グロブリン(抗体)の減少
- フィブリノーゲン減少:播種性血管内凝固症候群(DIC)
補足:DICでは、全身で血液が異常に凝固し、フィブリノーゲンが消費され減少します。
- フィブリノーゲン減少:播種性血管内凝固症候群(DIC)
- 負に帯電する赤血球やアルブミンの増加
- 赤血球増加:多血症、脱水
補足:多血症や脱水では赤血球濃度が増加し、赤血球同士が反発しやすくなるため、沈降速度が遅延します。
- 赤血球増加:多血症、脱水
まとめ
貧血の背景に炎症や慢性疾患がある場合、血漿中の急性期タンパク(例:フィブリノーゲン)の増加や赤血球数の減少により、ESRが亢進することがよくあります。ただし、ESRはあくまで体内の病態を把握するための一指標に過ぎず、他の所見とあわせて慎重に解釈することが重要です。
覚え方


また、女性は男性と比べて貧血傾向のため、女性の方が赤血球沈降速度(赤沈)が亢進しやすい事も併せて覚えておきましょう。
貧血のとき、赤血球沈降速度(ESR)はどう変化するでしょうか?クイズ形式で考えながら、亢進や遅延のメカニズムに…









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