クイズの正解
正解は、防御因子(胃粘膜保護作用のあるプロスタグランジン)の産生を減少させるためです。
以下が詳しい解説となります。
NSAIDsとは?
作用のメカニズムおよび副作用について
ロキソニンやボルタレンなどNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類される解熱鎮痛剤は、 胃粘膜保護作用のあるプロスタグランジンの産生を抑制します。
外傷や感染により細胞膜から遊離されたアラキドン酸がCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)により代謝を受けると、 炎症や熱発を増強するプロスタグランジンが産生されます。 非選択的にCOXを阻害するNSAIDsは、炎症を増強するプロスタグランジンの産生を抑制(COX-2阻害)するだけでなく、 胃粘膜保護作用のあるプロスタグランジンの産生も抑制(COX-1阻害)するため、 胃腸障害が引き起こされる事があります。

胃への負担を軽減するためには?
NSAIDsによる胃への負担を軽減するためには以下に紹介する様々な方法がありますが、胃を負担をかけるメカニズムとして以下の2つがあります。
①②どちらに対して有効な対策かを考えると理解しやすくなります。
- 防御因子を減少させる機序
- 胃粘膜細胞を直接傷害する機序
①の機序は良く知られている胃障害のメカニズムであり、前述の通りです。
②のメカニズムですが、NSAIDsは酸性医薬品であり、胃内pHが低いほど分子型の割合が増えて胃粘膜細胞から吸収されやすくなります。
胃粘膜細胞から吸収されたNSAIDsは中性環境下の細胞内で多くはイオン型となり、細胞内に蓄積することで胃粘膜を直接傷害します(下図参照)。

これら①②の胃粘膜を傷害する機序をふまえた上で、胃障害を軽減する方法をみていきましょう。
COX-2選択的阻害薬への変更
機序①への影響を軽減する目的です。
セレコキシブなどのCOX-2を選択的に阻害するNSAIDsは、炎症の原因となるCOX-2は抑えるが、胃粘膜を保護するプロスタグランジン(PG)の産生に必要なCOX-1をほとんど阻害しないため、粘膜障害を防止できます。
カバさーんこれで解決するなら、COX-2選択阻害薬ばっかり使ったらいいんじゃないの?
ただし、COX-2を選択的に阻害すると心血管イベントが起こりやすくなるといったジレンマがあります。
COX-2選択的阻害薬が心血管リスクを増大させる主な理由は、プロスタサイクリン(PGI2)とトロンボキサン(TXA2)のバランスの不均衡です。
COX-2選択的阻害薬は、血管内皮に存在するCOX-2を阻害することで、血管拡張作用と抗血小板作用を持つPGI2の生成を低下させます。一方で、血小板の凝集を促進するTXA2はCOX−1によって産生されるため、阻害されず残存します。この結果、TXA2の作用が優位になり、血栓ができやすい状態(血栓形成優位)となり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。
胃粘膜保護作用のある薬を併用する
直接的な作用ではありませんが、機序①および②による影響を軽減する目的です。
胃粘膜を保護したり、修復を促進したりする目的でテプレノン、レバミピド、スクラルファートを用いたり、プロスタグランジンを補う目的でプロスタグランジン製剤(ミソプロストールなど)を使用します。
胃酸分泌抑制薬と併用する
機序②による影響を軽減する目的です。
H2ブロッカーやPPIなど、胃酸分泌を抑制する薬を服用することで胃内pHを上昇させることによって、胃内でのイオン型NSAIDsの割合を増やします。
その結果、胃で吸収されるNSAIDsの量を減らし、胃粘膜細胞の直接傷害を減らすことができます(下図参照)。


このようにNSAIDsとPPIを併用することで、直接的な胃障害を軽減できますが、腸への影響はどうでしょうか?
Quiz
- NSAIDsとPPIを併用することで、胃への負担を軽減する
- NSAIDsとPPIを併用することで、胃および腸への負担を軽減する
上記はどちらが正しいでしょうか?以下の記事(NSAIDs服用時にPPIを併用する目的は?)で詳しく解説しておりますのでご覧ください!


空腹時の服用は避ける
機序②による影響を軽減する目的です。
先ほどの胃酸分泌抑制薬を併用する機序と同じです。
胃内pHは空腹時の方が低く、NSAIDsは胃粘膜細胞から吸収されやすい分子型が多く存在するため胃障害リスクが高まります。
食後に服用することで胃粘膜細胞から吸収されるNSAIDsを減らすことができると考えられています。
なるべく多めの水で服用する
機序②による影響を軽減する目的です。
多めの水で服用することで、物理的な胃との接触を避ける事が出来ます。その結果、胃粘膜細胞から吸収されるNSAIDsの量を減らすことができます。
参考文献
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