クイズの正解(クイズに答えてからご覧ください)
収縮期血圧が高い170/80と180/110の選択肢が、太い血管の動脈硬化が疑われます。
順を追って解説していきますが、まずは収縮期血圧と拡張期血圧の違いについて理解しましょう。
収縮期血圧とは?
心臓が収縮して血液を送り出すとき(収縮期)に供給された血液は、太い動脈が膨らむ事で貯留されます。この時(収縮期)に太い動脈にかかる圧力のことを収縮期血圧(上の血圧)と言います(図1参照)。

拡張期血圧とは?
心臓が拡張する時(拡張期)は、(収縮期に血液を貯留して)膨らんだ太い動脈が弾力性により元の太さへ戻ることで、貯留された血液を末梢へ供給します。この時(拡張期)に太い動脈にかかる圧力のことを拡張期血圧と言います(図2参照)。

収縮期・拡張期において、太い動脈は血流による圧力を緩衝する役割があり、細い動脈は血管の抵抗を調整する役割があります。
カバさーん血圧の薬って下の血圧(拡張期血圧)も下げるの?
降圧薬の多くは、細動脈を含む末梢血管を拡張させる作用を持つから、拡張期血圧も低下させるよ!
- 収縮期血圧と拡張期血圧はいずれも、太い動脈にかかる圧力を反映したものである。
- 太い動脈は、弾性により血流による圧力を緩衝する役割がある。
- 細い動脈は、血管の抵抗を調整する役割がある。
- 脈圧差は40~60が正常である。
このポイントを理解できたら、動脈硬化時の血圧変動がとても理解しやすくなるよ!
高血圧の基準は?
以下は日本血圧学会高血圧治療ガイドラインを参考に作成したグラフとなります。


クイズの選択肢の血圧について
前置きが長くなりましたが、ここから本題のクイズの選択肢の血圧についてそれぞれ解説を行います。
125(収縮期血圧)/95(拡張期血圧)の場合
拡張期血圧が高く、脈圧差が30と小さい(40~60が正常値)ことから、細い血管の動脈硬化が進んでいるが、太い血管は動脈硬化を起こしておらず、弾力性が保たれている状態と考えられます(拡張期高血圧)。
細い血管の動脈硬化としては、糖尿病や高血圧、加齢、喫煙などが細い血管の動脈硬化の主なリスクファクターとなります。
細い血管の動脈硬化があり、末梢の血管抵抗が高い場合、拡張期に太い動脈は(収縮期に)貯留した血液を押し出せず、動脈内の圧が収縮期から下がりきらずに持続(拡張期血圧が上昇)します(図3参照)。


このように、細い血管が動脈硬化している場合は、拡張期血圧に対してダイレクトに影響を与えます。
一方で、収縮期血圧は太い動脈の弾力性が十分に保たれていれば少し上昇か横ばいとなり、太い血管の動脈硬化が進行していれば上昇します。
ただ実際には、細い動脈の動脈硬化が原因で選択肢の125/95のように収縮期血圧の上昇が抑えられるケースは非常に珍しく、以下の3つの理由から収縮期血圧も上昇します。
- 細い血管が動脈硬化していれば、太い血管の動脈硬化もある程度進行していることが多く(一般的に動脈硬化は太い動脈→細い動脈の順で起こるため)、その場合、硬くなった太い動脈が収縮期に圧を受け止めることが出来ず、収縮期血圧の上昇がみられる。
- 末梢血管抵抗が高い中で末梢や組織へ血液を供給するために心拍出量が増加し、収縮期に太い動脈を流れる血流量が増加する。
- 末梢血管抵抗が高く、血流が停滞し、収縮期に太い血管に貯留される血流量が増加する。
2. 3. の場合で、太い動脈の弾力性が十分に保たれており、大きく膨らみ圧力を吸収できれば、収縮期血圧の上昇は抑えられますが、吸収できる圧の限界を超えた場合は収縮期血圧は上昇します。
また、太い動脈の弾力性により血圧上昇が抑えられていたとしても、太い動脈に大きな負担がかかっている状態のため、太い血管の動脈硬化が進行し収縮期血圧が上昇します。
これらの理由から収縮期血圧も上昇しやすく、上昇を抑えられていても一時的であることが多いです。



なら、どんな時に拡張期高血圧が起こるの?
拡張期だけが高いパターンは、交感神経優位の若年層に見られるよ!
これは、末梢の細動脈が一時的に収縮することで血管抵抗が高まるからなんだ。
いずれにせよ拡張期血圧が高い状態は、細動脈の収縮や硬化により末梢血管抵抗が亢進していることを示唆します。
- 太い動脈の弾力性は保たれており、収縮期血圧は上昇傾向(または正常)
- 細い動脈の収縮(または硬化)により末梢血管抵抗が増大し、拡張期血圧が上昇
- 原因の多くは、細動脈の収縮による末梢血管抵抗の増大
- 脈圧差は減少傾向
170(収縮期血圧)/80(拡張期血圧)の場合
収縮期血圧が高く、脈圧差が90とかなり大きい (40~60が正常値)ことから、太い血管の動脈硬化が進行しているが、細い血管は正常であることが考えられます。
高脂血症や高血圧(寄与度はやや低い)、加齢、喫煙などが太い血管の動脈硬化の主なリスクファクターとなります。
もともと太い動脈は弾力性が高く、膨らむ事で圧を吸収し、血圧の上昇を抑制する緩衝材のような役割があります。
この太い動脈が硬くなると、収縮期に血流による圧を逃せず収縮期血圧が上昇します(図4上参照)。
一方で拡張期は、末梢の血管抵抗が少ないため、太い動脈から末梢へとスムーズに血液が流れるため圧が持続せず拡張期に血圧が下がりやすいです(図4下参照)。
このように収縮期血圧は高く、拡張期血圧は上昇しにくいため、脈圧が大きくなりやすいです。


180(収縮期血圧)/110(拡張期血圧)の場合
収縮期血圧と拡張期血圧がともに高く、脈圧差が70と大きい (40~60が正常値)ことから、太い血管と細い血管もどちらも動脈硬化が進行していると考えられます(図5参照)。


収縮期は、以下の2つの要素により、太い血管のみが動脈硬化している場合よりも高くなりやすいです。
- 細い血管が動脈硬化している事から末梢血管抵抗が高い中で末梢や組織へ血液を供給するために心臓がより強く収縮し、収縮期に太い動脈を流れる血流量が増加する。
- 太い血管の動脈硬化から収縮期に血流による圧を逃しにくい。
一方で拡張期血圧は以下の2つの要因により、細い血管のみが動脈硬化している時よりも、拡張期血圧がより上昇しやすいです。
- 末梢血管抵抗が高い事から、太い動脈から血液が供給されにくく、圧が持続する。
- 太い血管の動脈硬化の影響で、元の太さに戻る修復力が落ちており、太い動脈から血液が供給されにくいため圧が持続する。
まとめ
以下の表はここまで紹介してきた動脈硬化が起こる部位と血圧の変動の関係をまとめた表となります。
| 細い血管のみ 動脈硬化 (かなり稀) | 太い血管のみ 動脈硬化 | 細い血管と 太い血管の 動脈硬化 | |
| 収縮期血圧 | ↑(or正常) | ↑↑ | ↑↑↑ |
| 拡張期血圧 | ↑↑ | ↓ | ↑↑↑ |
| 脈圧差 | 減少傾向 | 増加 | 増加傾向 |
次にクイズの選択肢の血圧を動脈硬化の進み方に注目して、時系列で整理すると次のようになります。
太い血管から動脈硬化が始まる事が多く、まず収縮期血圧の上昇がみられます。
細い血圧まで動脈硬化が進むと、拡張期血圧も上昇します。
※細い血管のみの動脈硬化は非常に稀であるため、病態の進行に拡張期高血圧(選択肢の125/95)は通常登場しません。
覚え方
「拡張期血圧の上昇は、細い血管の動脈硬化や収縮により、末梢血管抵抗が亢進した状態である(ことを示唆する)。」という事は覚えておいてください。


拡張期血圧の基準はだいたい90ぐらいと覚えておこう!


参考文献
- Safar ME, London GM. “Arterial and venous compliance in sustained essential hypertension.” Hypertension. 1987.
- Franklin SS, et al. “Hemodynamic patterns of age-related changes in blood pressure. The Framingham Heart Study.” Circulation. 1997.
- O’Rourke MF, Hashimoto J. “Mechanical factors in arterial aging: a clinical perspective.” J Am Coll Cardiol. 2007.
- Mancia G, Grassi G. “The autonomic nervous system and hypertension.” Circulation Research. 2014.
- 高血圧治療ガイドライン作成委員会「高血圧治療ガイドライン 2019(JSH 2019)」
- 日本循環器学会 循環器病情報サービス「動脈硬化について」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「動脈硬化とは」
- Merillon JM, et al. “Anthocyanins and polyphenols in cardiovascular disease prevention.” Phytochemistry Reviews. 2008.
- WebMD「Arteriosclerosis / Atherosclerosis」
- 日本高血圧学会「一般の方へ 高血圧の予防と治療」
・125/95・170/80・180/110(正解は2つです)収縮期血圧と拡張期血圧は、動脈硬化によってどう変…









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